どの国も領有権を主張していない地域「ビル・タウィール」

 私が中学生だった頃、何の気なしに世界地図を眺めていた時に、エジプト・スーダンの国境付近にある帰属地が判然としない地域が2か所あることに気づきました。

 1か所目は、紅海沿岸の「ハラーイブ・トライアングル」(地図の右部分)と呼ばれる地域で、エジプトとスーダンの両国が領有権を主張しており、現在はエジプトが実効支配している地域です。(アブー・ラマド、ハラーイブという町があります。)

[ここに地図が表示されます]

 2か所目は、今回タイトルにある「ビル・タウィール」(地図の中央部)で、どの国も領有権を主張していない、珍しい地域となっております。

 ちなみに衛星写真で見る限り、ビル・タウィールは砂漠以外に何もありません

 ハラーイブ・トライアングルは北緯22度線の北側に位置し、ビル・タウィールは北緯22度線の南側に位置しております。(ハラーイブ・トライアングルはビル・タウィールの約10倍の面積があります。)

 なぜ帰属地が判然としない事態になってしまったかというと、この地域の覇権を握っていた英国が、1899年にエジプトとスーダンの境界を北緯22度線としたことが発端となっております。

 その後、英国は1902年に新たに境界線を変更し、経済的・文化的な繋がりからビル・タウィールをエジプト側、ハラーイブ・トライアングルをスーダン側としました。

 ここで両国のハラーイブ・トライアングルの帰属の根拠をみていきますと、次の通りとなります。

 エジプトの根拠 「エジプトとスーダンの国境線は、1899年に境界を決定した北緯22度線であることから、ハラーイブ・トライアングルはエジプト領であり、ビル・タウィールはエジプト領ではない。」

 スーダンの根拠 「エジプトとスーダンの国境線は、1902年に変更された境界であり、ハラーイブ・トライアングルはスーダン領であり、ビル・タウィールはスーダン領ではない。」

 ビル・タウィールが現在、何かしらの経済的価値があれば、いずれかの国が領有権を主張するということもあるのでしょうが、ハラーイブ・トライアングルの領有権問題が片付かない限りは、ビル・タウィールを領有したところで大してメリットがありませんので、今後も領有権が主張されない地域として残されることでしょう。




 ちなみにビル・タウィールにおいて、領有を主張する人が何人かはいて、勝手に国家としての独立を宣言しているとのことですが、当然のことながらどの国家からも承認されていない状況です。